2009年6月29日月曜日

教科書もグローバリゼーション

最近,復習を兼ねて数学の解析の教科書(英文)を読んでいる.本文だけで774ページ.厚くて重いが,とても分かりやすい.

この教科書,第9版である.まるで人気ソフトウェアのようである.世界で相当に売れているのだろう.学部生レベルの教科書なので,新しい内容がそう入っている訳ではない.多くのバージョンアップの努力は,読みやすさ・使いやすさの向上の為に費やされていると思われる.実際,親切に,謎がないように書かれていて,おそらく高校生でも理解できる.

このように,一冊の教科書にエネルギーを注ぎ込むことが可能なのは,世界を市場としているからなのであろう.それから,著者はおそらく,教科書書きを天命と思っているかもしれない.やりがいのある仕事である.

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Dale Varberg

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日本の教科書は一般に薄い.そして,多くの種類が出版されている.日本の出版社は一般に,リスクの高い,厚い本を嫌がる.赤字になる可能性が高いからだ.

最近,理工系の若い人が,数学が好きでない人が多いと聞く.おそらく,中学までは「ゆとり」で,高校で急速に詰め込みを受けて,数学の楽しみを味わっている余裕がないからではないか.

「このような本に出会い,数学が好きになりました」という高校生や大学生がいてもよい.というか,このあたりに日本の教育の改善点があるのではないか,と思っている.疲弊せずに大学に入り,目に輝きを持って,勉学に励んで欲しいと願っている.

よりよい教育を目指すなら,教科書もできるだけよいものを選ぶべきだと思っている.日本だけを市場とした日本語の教科書では,得られる利益とかけられるエネルギーは,著者も出版社も自ずと限られる.ベストの教科書を選ぶと,洋書となることが多い.そしてそれは,とても読みやすく(英語であろうと),up-do-dateな更新がされている,というのが私の意見である.実際,助手時代以来,20年来,専門分野の教科書は自然と洋書となっている.

ベストな選択を行った結果,それがたまたま日本語であれば,それはそれで結構なことである.