2009年6月16日火曜日

環境問題と自家発電

今朝のNHK番組で見たところによると,一軒家の屋根に付けたソーラーパネルは,10年で取り付け費用が回収できるとのこと.これは,発電した電気の利用,売電,市・県・国の資金援助の総計による.公的資金援助は,しばらく止まっていたが,最近再開したらしい.

また,副次効果として,家庭内で節電を心がけるようになるそうだ.なぜなら,家庭内に接地された制御パネルにより,現在の発電量と消費量が一目でわかり,電気黒字(つまり売電状態)になるようにしようとうする心理が働くから.

以下,考察.

ソーラーパネル等による自家発電は,設備コストを考えると,経済的とは簡単には言えない.10~20年での償却を考えねばならない.しかし,「戦略的」観点で考えると,以下のような効果がある.(先日の環境シンポジウムで,「戦略」を意識せよ,と学んだことにインスパイアされている)

1.国が不況対策として,赤字国債を発行してでも国費を民間に投入しようとするとき,何らかの合理性,正当性,説得性をもった,多くの人々が素直に受け入れられる概念,キーワードが必要だ.現在は「環境問題」,「地球温暖化問題」が,世界レベルの協調により,そのようなキーワードとなった.(今や「環境」は,世界的レベルの,戦略的キーワードである)そのような状況においては,キーワードの概念が,本当に科学的に有効なのか,あるいは,50年,100年後に振り返って本当に有効かどうかよりも,現時点で民衆の支持が得られるかどうかが重要なのだ(まさに政治と行政である).ということで,公的資金をソーラーパネル事業振興等に注入し,それを「パイプ」として,資金を民間に送り込める.

ちなみに,もし合理性,正当性,説得性を欠いたもの公的資金を注ぎ込むと,それは問題誌され,小から大まで,さまざまな波紋を呼んでしまう.(最悪,「事件」となる)

2.ソーラーパネルというクリーンな発電装置(ソーラーパネル自体の製造過程や,廃棄問題を別にして)を,あちこちに取り付けていくには莫大な資金を要する.一部を「呼び水」として公費負担,残りは国民に負担してもらうというのは,一つの有効戦略として考えられる.

3.クリーンな発電装置を増やしていけば,発電所を増やさなくて済む.あるいは,発電所における発電量を減らせる.これぞ本当の「省エネルギー」である.「発電所作り」という公共事業はできなくなるが,化石燃料や水力発電による「発電所作り」は,今日においては,支持が得られず,時代に逆行する「キーワード」である.

4.家庭発電は,情報システムにおけるクラウド化(=インフラ共有/集中)と反対の現象になっていることは興味深い.サーバあるいはクラウドを分散化したものがP2Pであり,電力分野における自家発電・売電に対応する.